第二章 例外

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 そして、翌週の水曜日。  午後の授業を終え校舎を出ると、街路樹の陰からぬっと人が現れた。 「小川先生」 「おっ? 遠野か。まだいたのか」  昴のクラスは午前なので、貴臣の授業が終わるまで4~5時間待っていたということになる。 「ここでずっと待っていたわけじゃないです。あっちの校舎の図書室で勉強していたので……」  そこで一旦言葉を切った昴は、一度大きく息を吸い、それから口を開いた。 「あの先生……」 「ん?」 「だいぶ前のことだけど、もしかして渋谷の岡本太郎の壁画の前にいた?」 「どのぐらい前のこと?」 「うーん……2カ月ぐらいかな」  そうか。  昴も気づいていたのか。  こっちの存在に。 「ああ、あそこはよく行くから、俺かもな。立ち止まっている物好きも、あまり見かけないし」  貴臣は昴に気づいていたことは言わずに、そう答えた。 「やっぱ、そうですよね。あー、やっとすっきりした。俺、先生のこと、どっかで見たことある人だなって、初日からずっと思ってて。でも違ってたら恥ずかしいから、なかなか言いだせなかったんです」    貴臣は思わず笑みをこぼした。 「なんだ、そんなことなら早く聞いてくれればよかったのに。遠野は岡本太郎、好きなの?」
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