第二章 例外

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「はい、俺、小さいころ、万博公園の近くに住んでたことがあって。で、〝太陽の塔〟をはじめて見たとき『うわ、かっけー』って衝撃を受けて、それからずっと推しです」  今度は昴が、教室では見せたことのないような顔で笑った。  目尻が下って親しみやすい顔になる。  頬にえくぼができるのも、今、はじめて知った。   「あ、引き止めちゃってすみませんでした。じゃ、先生。また明日」  それを聞くだけのために、待っていたのか。  貴臣はこのまま帰すのは、なんだか悪いような気がした。 「遠野」  後ろ姿の昴に声をかけた。 「腹減ってないか。なんかおごるよ」  昴はぱっとこっちを見て、目を見張った。 「え、まじ。やった。行きたいです」  実を言えば、待っていてくれたお詫び、というわけではなかった。  貴臣にはとても珍しいことだったが、この子とはもう少し話がしてみたい。  そう思ってのことだった。 「なにがいい?」 「うーんと、あ、あそこのラーメンがいい……です」  昴は5メートルほど先に見える看板を指差した。 *** 「らっしゃい」  まだ4時すぎの中途半端な時間だったので、席は空いていた。
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