第二章 例外

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「何かあったのか?」 「何かないと、呼びだしたらだめなの?」 「そんなこと、言ってないよ」  七海らしからぬ言い方だ。  虫の居所が悪そうだ。  なるべく刺激しないよう、貴臣は次の言葉を待った。 「ごめん。つっかかって。ちょっと仕事で落ち込むことがあって。臣に聞いてほしくなったの」 「そうだろうと思ってたけど。いいよ。すっかり吐きだせよ。ストレス貯めこむ前に」 「優しいね。相変わらず。いつものことなんだけど、上司がね……」  七海の上司はなかなか問題の多いタイプで、貴臣をランチへ誘うときは、たいてい上司への愚痴がたまっているときだった。  七海は弾丸のように、相手への恨み言を吐き散らし、合間にピザを食べ、また文句を言い始めと、精力的にランチタイムを使いきった。 「少しは気分、浮上した?」 「うん、ありがとう。ごめんね、いつも。これで午後の仕事、なんとかこなせそう」  聞き役は得意だと、自分でも思う。  でも、優しい人間だからってわけじゃない。  いい話も悪い話も、貴臣にとっては、同じ他人事でしかなかったから、どんな話でも聞けるというだけだ。
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