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七海と同じ方向に戻るので、並んで歩いていた。
よほど参っているのか、彼女は腕を絡ませてくる。
特に断る理由もないので、そのままにしていた。
そうして書店の前を通ったとき、ちょうど買い物を済ませた昴とドアのところで出くわした。
「あれ、遠野」
「あ、小川先生」
「買い物か?」
「あ、えっと、参考書買わなきゃいけなくて……」
昴は生返事で貴臣と七海の顔を交互に見て、それから「じゃあ」と言って頭を下げると、足早に立ち去った。
「誰?」
「クラスの子」
「なんか、凄みのある美形だった」
「凄み? そんなふうに感じたことないけどな」
「じゃあ、たぶん気のせいね。ちらっと見ただけだし。あ、そうだ。わたしも本屋に寄ってく」
午後の授業まで、あまり時間がなかったので、七海とはそこで別れた。
歩きながら、彼女はただの友人だと昴に言っておこうかと思い、いや、そんな必要はまるでないよなと、即座に自分の考えを否定した。
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