第二章 例外

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 昴は誰よりも頑張っていたし、成長も著しかった。  ここでやめるのは、本当に惜しい。    が、一介の、それもバイト講師が口出しできる話ではない。  それぞれの家庭の事情もあるだろうし。  最終日にまたメシでもおごってやろう。  せめて、昴の絵に対する自分の考えを率直に伝えてやりたいと思っていた。  講師が認めたと言えば、彼の親も続けることを許してくれるかもしれない。    だが、その最終日、昴は欠席した。 *** 「あ、小川先生。聞きました?」  午前の授業を終え、事務室に戻ると加藤さんが小走りで近づいてきた。 「先生のクラスの、あのS高の子」 「遠野? 今日、休んでたけど、病気か何かですか?」  彼女は首を振った。 「朝、玄関のところで、お父さんに無理やり、家に連れ帰られたんです。絵なんか習いに行かせた覚えはないって」 「は?」 「遠野君、特進クラスの夏期講習を受けてるって、家で言っていたらしいんです。でも、こっちに来てることがばれてしまったらしくて、お父さん、ものすごい権幕でしたよ」  そうか。  昴が毎日早く来ていたのは、特進の始業時間に合わせていたからだったのか。
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