第二章 例外

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「親御さんは反対なんですね。彼が芸大を受けること」 「そうでしょうね。まあ、理解できないこともないですけど」  加藤さんはそう言って、肩をすくめた。  昴が続けられないのは、家庭の事情以前の問題だったわけか。  貴臣はすぐ昴にLINEを入れた。  が、いつまで経っても、返信どころか既読もつかない。  気にはなったがどうすることもできず、貴臣はもやもやを抱えたまま、午後の授業に向かった。 *** 「先生……」  夕方、学校を出ると、前と同じ、街路樹の陰から昴が現れた。  まだまだ昼の熱気が残っていて耐えがたい暑さなのに、薄手とはいえ、パーカーを着て、フードまで被っている。   「遠野、どうした?」  昴はフードで顔を隠していた。  覗きこむと、痛々しいほど頬が腫れているのがわかった。 「おい……その顔」 「……家から出るなって言われたけど、抜け出してきて」 「父親か?」  昴はかすかに首を立てに動かした。 「いくら親でもやっていいことと悪いことがあるだろ」 「先生……」  貴臣には珍しく、感情をあらわにした。 「詳しい話が聞きたいな。そうだな、俺の部屋、来るか?」
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