第二章 例外

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「……いいの?」 「この辺の店に入ってもいいけど、その顔、あんまり人に見せたくないんだろ?」 「ごめん……先生、ありがと」  貴臣は、昴の背中をぽんと叩き、駅に向かって歩きだした。 ***  下宿は大通りから1本入った住宅地にある古いアパートだった。  2階建てで外階段がついているタイプ。  貴臣の部屋は、4部屋並んでいる2階の一番奥だった。  古くて不具合も多かったが、角部屋で裏が駐車場になっていたので日当たりが良く、家賃の割には部屋が広いところも気に入っていた。  絵を描くのに最適だった。  とんとんと音を立てて階段を上りながら、昴はめずらしそうにきょろきょろ、あちこちを眺めている。  たぶん、こいつの家は豪邸かタワマンなんだろうな。  なんか、そんな気がした。 「どうぞ、入って」  そう言いながら、ドアを開けた。 「へえ」  昴が軽く驚いたような声を上げた。 「何にもない」 「必要なものはそろってるけどな」 「男の一人暮らしって、散らかってるイメージだけど」 「ああ、散らかるのが嫌だから、よけいなものは置かないんだよ」  言われてみれば、たしかに殺風景な部屋だ。  家具といえば、ベッドとスチール棚と小さな机だけ。
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