第二章 例外

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「まあ、普通、親ならそう言うな」  昴はじっと貴臣を見つめた。 「先生も反対されたんですか? 美大に入るとき」 「うちは親が中学の美術の教師だったから。反対はされなかった」  反対もなにも、父親は息子にまったく関心がなかった。  自分のことしか考えていない人だったから。  いや、疎まれていたというのが正解かもしれない。 「家族がいなきゃ……俺だって」  酒が入ると父親が決まっていうセリフだった。  それからうだつが上がらない自分の人生に対する呪詛が延々と続いた。  結婚なんてしなけりゃ……  子供さえ生まれなきゃ……   「先生はいいな……めっちゃ羨ましい」  昔の嫌だったことを思い出し、気持ちが沈みそうになったとき、昴に声をかけられて浮上した。  干渉されるぐらい、親に目をかけられる遠野が羨ましいよ、と言いたかったけど言わなかった。  そんなことを唐突に言われても、困惑するだけだろう。 「俺はさ、講師の立場で、って、たった3週間しか教えてないのに偉そうだけど。遠野はものすごくいい感性を持ってると思う。だから、できれば、講座を続けてほしい」 「でも無理。もう塾代、ごまかせないし」
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