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玄関に向かっていこうとする昴の背中に、貴臣は思わず声をかけた。
「じゃあ……俺が教えてやろうか」
「えっ?」
昴は振り向いた。
目を見開いている。
貴臣の提案があまりにも意外だ、と言う顔だ。
気の迷いでないとわからせるために、さらに言い足した。
「時間があるとき、ここに来てくれるなら」
「でも……そんな、迷惑だし」
「デッサンを教えるぐらいの時間は取れるよ。院生だから毎日、大学に行くわけでもないし、2学期になったら予備校の授業も減るし。日曜は基本休みだし」
「先生が教えてくれるなんて、そんな……ありがたいことないけど」
「じゃあ、決まりだな。別に学校じゃないから、遠野が来たいときに連絡してくれればいい」
「本当に?」
昴は潤んだ目を向けた。
「ああ」
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