第二章 例外

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「やった……ありがとう、先生。めちゃくちゃ嬉しい」  昴は、これぞ笑顔の見本という顔で笑った。    駅まで昴を送り、コンビニでビールを買って家に戻った。  窓から外を眺めながら、ビールのプルトップを開ける。  さっきの昴の笑顔が残像として、頭にこびりついていた。    またもや、普段の自分なら考えられないようなことを言ってしまった。  他人に降りかかった出来事なのに、あんなに切羽詰まった、切実な気持ちになるなんて。  ただ、昴に軽蔑されたくない一心だった。  それに笑ってほしかった。  昴にだけ、なんでこんなことを思ってしまうのか。    貴臣は自分のなかに他人が存在しているような、そんな奇妙な感覚を覚えていた。  
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