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第三章 急接近と突然の遮断
〈takaomi〉
こうして月に2回ほど、昴は貴臣の部屋に来るようになった。
部活のない水曜日か日曜日が多かった。
親には図書館で勉強していると言っているらしい。
貴臣は昴のために、牛骨や石膏像を手に入れた。
S高生である昴は、学科試験に関してはまったく問題ない。
とにかく実技試験にパスできる力をつけさせようと、毎回、課題を出してアドバイスした。
昴は実に熱心な生徒だった。
貴臣の言うことは最大洩らさず聞き、また、次に来るときまで、必ず10枚ほどのデッサンを描いて、見て欲しいと持ってきた。
先生に貴重な時間を割いてもらっているのだから、そんなのあたり前だと昴は笑う。
彼の努力は作品にしっかり表れ、はじめて会ったときからまだ、3カ月に満たないのに、飛躍的に上達していた。
休憩時間には、さまざまなことを語り合った。
年が離れているから、話が合わないこともあったが、同じ画家を志す同士、意外に共通の話題もあった。
昴もずいぶん、貴臣に気を許すようになって、口調もすっかり砕けてきた。
貴臣はそれが嫌じゃなく、むしろ嬉しかった。
そんな自分をまた、不思議に感じていたが。
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