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昴が通いはじめて、ひと月ほど経ったころ。
11月に入ったばかりの晴天の日で、小春日和という言葉がふさわしい、穏やかな午後だった。
いつものように雑談をしていたときのことだ。
「でも臣先生が、岡本太郎が好きって意外。ぜーんぜん違うタイプの絵を描いてるのに」
イーゼルに立てかけてある貴臣の絵を観ながら、昴が言う。
後ろの窓から陽が差していて、逆光で影になり、表情は良く見えない。
ふわっとカールした髪が日に透けて、金色に輝いている。
これで翼があったら天使だな。
そんなことを思って昴を見ていたら「話、聞いてた?」と軽く文句を言う。
「聞いているよ。確かにな。正反対だから惹かれたのかもしれない」
「ああ、それならわかる気がする」
「昴は、なんで好きになったんだっけ」
「前に大阪にいたって話はしたよね」
「ああ」
「『太陽の塔』を初めて見たのは、まだ幼稚園に入る前のチビのころだったんだけど、とにかくぶったまげて。その夜、高熱、出したんだって」
「なんで?」
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