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ということは、もしかして、気づいていないだけで自分はゲイだったのだろうか。
いや、そう結論づけるのも短絡的すぎる。
昴以外の男に、そうした感情を抱くなんて想像すらできない。
思考が脈絡なく空回りして、どうしていいかわからず、貴臣は何もできず、何も言えなかった。
情けないが、その場で、昴が泣き止むのをただ待つしかなかった。
しばらくして昴はようやく泣き止み、ティッシュを丸めてゴミ箱に捨てると、照れくさそうに笑った。
「急に泣いたりしてごめん。昨夜、また父親とやり合って、だいぶ神経が参ってたんだ。でも、今の、先生の言葉で嫌な気持ちが全部吹き飛んだ」
「まだ反対されてるのか」
「そりゃね。そんなに簡単な相手だったら苦労はないよ」
「昴の将来を思ってのことだろう」
「違うって、世間体だよ。うちの息子は東大生ですって言いたいだけ」
「それはまた、ずいぶん穿った見方に思えるけど」
「臣先生も一度会えばわかるよ。ああ、もう、父親の話なんかでつぶしたら、時間もったいない。もう始めよう」
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