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〈subaru〉
今日は幸せすぎた。
その反動で、今は地の底まで潜ってしまいそうな気分だ。
家に帰ると「ただいま」とだけ言って、すぐ自室にこもった。
一緒にいたときの先生の表情、声……全部、頭のなかで再生できる。
必死で心に留めたから。
はしゃぐ自分を見守る優しい眼差し。
作品に込められた意図を解説してくれたときの声。
ウイスキーにむせたとき見せた、レアな焦り顔。
貴臣が作品に注目しているとき、昴はそっとその横顔を見ていた。
眼鏡の奥の切れ長の眼、通った鼻筋、薄く引き締まった唇。
ウイスキーグラスを持つ指の美しさにも、心が揺さぶられた。
触れてみたい、とすら思った。
自分はもう引き返せないほど、先生が好きになっている。
今日、再確認した。
この想い、いったいどうすればいいんだろう。
どうやって、自分だけで消化すればいいんだろう。
やるせない気持ちを少しでも解消しようと、昴はスケッチブックを取り出し、記憶を頼りに貴臣の姿をひたすら描きつづけた。
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