第三章 急接近と突然の遮断

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〈takaomi〉  家に戻ってからも、何もする気が起きず、貴臣は窓辺に座って煙草を口にくわえた。  煙を吐き出しながら、思い浮かぶのは昴のことだけだ。  すぐに煙草を消し、貴臣はクロッキー帳を広げて、彼の姿を憑かれたように描きはじめた。  全身、背面、アップ。  笑顔、ふくれた顔、泣き顔。  自分がゲイなのだろうかという問題はとりあえず置くとして、昴に特別な感情を抱いていることは、もう否定できない事実だ。  こうして描くことで、昴が貴臣の内面にゆるぎない形で固定されていくのがわかる。  だが自覚してしまった以上、今までのように昴に接することはできない。  昴はまだ17歳の高校生なのだ。  そんな相手に恋愛感情を抱くのは犯罪に等しい。  いやもちろん、具体的に何かをしたいと思っているわけじゃない。  すくなくとも今は。  でも、何かのきっかけで自分の感情をぶつけてしまうかもしれない。  そんなドス黒い欲望で、無垢な昴を汚したくない。  ただでさえ、人との距離の取り方が下手な自分だ。  昴を傷つけてしまうに決まっている。  距離を置こう。  昴のために、そうしなければ。
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