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親には、特進に通っていることにして、ここでデッサンの基礎をきちんと学ぶ。
それが夢への第一歩だ。
わくわくとドキドキが入り混じった気持ちを抱え、昴はその校舎に足を踏み入れた。
受付で「基礎クラス」の見学をしたいと頼み、事務の女性の案内でアトリエに向かう。
廊下に、使わなくなったものなのか、石膏像が無造作に置かれている。
それを見るだけでも心が躍る。
「小川先生、見学希望の生徒さんです」
アトリエに入った事務の女性は、講師の男性に声をかけた。
そして、彼が振り返ったとき、昴はわが目を疑った。
あれから、昴がずっと心に描いていた人。
渋谷で壁画を観ていた人が、そこに立っていたから。
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