第三章 急接近と突然の遮断

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 そして、がさがさと荷物を詰めこんで、後ろを振り返らずにドアに向かった。  貴臣が玄関に行く前に「今までありがとうございました。さよなら」という声と、ドアを閉める大きな音がした。    しばらくその場を動けなかった。  これで良かったのだと自分に言い聞かせていたが、心が身体に逆らっている。  少し経って、のろのろと、さっきまで昴が絵を描いていたイーゼルへと向かう。  何かがつま先に当たった。  下を見ると、昴のスケッチブックだった。  慌てて忘れたのだろう。  すぐに追いかけようとして、それを持ち上げたとき、手が滑った。  スケッチブックは床に落ち、ばさりと広がる。  そのページいっぱいに描かれていたのは、すべて自分の姿だった。  それを見たとき、思わずため息が漏れた。  自分たちは、期せずして、同じことをしていたのかと知って。  彼の描いた貴臣は、どれも穏やかな顔をしていた。  彼の前で自分はこんな表情をしていたのか。  あらためて、昴に対する自分の心を見せつけられた。  そして同時に、昴の心の内もはっきり悟った。  信頼を超えた、貴臣への恋心を。  相愛であったことを知った喜びと同時に、安堵の気持ちが広がった。  やはり、距離を置くことにしたのは正解だった、と。  
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