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母親と手をつないだ子供たちは、目を輝かせて赤や金のオーナメントで飾られたツリーを見上げている。
その、きらきらした瞳を目にしたとたん、頭のなかで昴の声が再生されはじめた。
――太陽の塔を見て、ショックで熱出したんだ。
ちょうどこのくらいの年ごろだったのだろう。
昴が初めて〝太陽の塔〟を見たのは。
当時の思い出を語っていたときの昴の笑顔がありありと目に浮かび、貴臣はそれをかき消すように頭を振った。
会わずにいれば、面影は自分のなかからすぐ消えてゆくはずだった。
でも、消えるどころか、その存在は膨らむ一方で、最近は、毎晩、夢に現れるようになった。
胸の底から沸きあがってくる、昴に会いたいという思いを手なずけるのは、至難の技で、完全にお手上げ状態だった。
自分がここまで昴を好きになっていたなんて、思いもよらなかった。
かといって、どうにもできないことはわかりきっていたけれど。
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