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その数日後のこと。
久しぶりに七海と食事することになった。
「臣、ちょっとやつれたんじゃない? 悩み事?」
顔を合わせたとたん、七海は言った。
なかなか行く店が決まらず、クリスマス仕様の街をぶらつきながら、貴臣はぽつりぽつりと昴のことを話した。
「ふーん、ま、わたしは気づいてたけど。あの子が貴臣を好きなこと」と七海は言った。
「そうなのか」
「うん、前にすれ違ったでしょう、本屋のところで。でも、まさか臣のほうが参っちゃうとは思ってなかった。人の子だったんだね、臣も」
「ちゃかすなよ」
「あれこれ考えずに、付き合っちゃえば?」
「だから……そんな簡単に言うなって。相手は高校生だぞ。それも男子の」
「そう言うと思ってた。結構、頭硬いもんね。でも相思相愛なんだから問題ないと思うけど。相手が未成年でも」
七海はあっさり、そう言うと立ち止まって貴臣に向き合った。
「じゃあ、わたしたちがこうやって会うのは、今日で最後にしよう」
「いや……」
別にその必要はないだろう、と言いかけたが、七海が先に口を開いた。
「はじめから決めてたのよ。もし臣に好きな人ができたら、この中途半端な友人関係は解消しようって。でも、すごいな、その子。あっという間に臣を虜にしちゃって。わたしは4年かけても、振り向かせることができなかったのに」
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