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〈subaru〉
「昴、待ちなさい!」
父親を突き飛ばし、行くあてもないのに家を飛び出した。
もう一秒も父親と同じ空気を吸いたくなかった。
こんなとき、頼れる友達もいないし、財布の中身は700円ちょっと。
でもとにかく、家から離れたかったから、地下鉄で新宿に出て、しばらくうろついた。
渋谷には行く気がしなかった。
嫌でも臣先生のことを考えてしまうから。
マックで、コーラとポテトで3時間粘って。
辺りが暗くなってきたころ、最悪なことに雨が降ってきた。
もちろん、傘なんて持ってないし。
買うには残金も心許ない。
でもまだ家には帰りたくない。
しゃーないから、ここで一晩過ごすか。
そう思って、居座れそうな場所を探したけど、どこも先客がいて無理だし、変なおっさんに声かけられそうになって、慌てて地下鉄のホームに降り、来ていた電車に飛び乗った。
本当は心細くてたまらなかった。
そして、心が叫んでいた。
会いたい、と。
その思いは、空気の詰まった緩衝材のビニールみたいに、沈めようとしてもすぐに浮き上がってくる。
会いたいよ、臣先生に。
でも……もう一度、あの眼で拒絶されたら耐えられるかどうか。
まじで倒れて死んじゃうかもしれない。
……東西線に乗り換えるとしたら、次の駅だ。
電車がカーブを曲がり、窓の向こうに駅の明かりが見え始める。
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