第四章 ターニング・アラウンド

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 どうしよう。  アナウンスとともに、プシュっと音を立ててドアが開く。  ドア近くに立っていた昴は、後ろの客に押し出される形で、その駅で降りた。  そして結局、落合駅に向かう電車に乗り換えた。 ***  出口への階段を上り、表に出る。  雨はまだやんでいなかった。  山手通の濡れた路面が光っている。  車のライトや信号が反射して、なんか綺麗だなと思った。    やっぱり、来ちゃった。  でも、まだ貴臣の部屋を訪ねる勇気が出ない。    それで、コンビニに行ったり、本屋で閉店まで立ち読みして時間を潰した。  とうとう行くところがなくなった。  少し小降りにはなったけど、今度は風が出てきた。  もういい。  突き放されてもかまわない。  昴は勇気を振り絞って、アパートに向かった。  
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