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〈takaomi〉
「おい、ん? 昴か」
「あ……臣先生」
そこにいたのは、雨に濡れて寒さに震えている昴だった。
「どうしたんだ、こんなところで……とにかく、中に」
貴臣は急いで鍵を開けた。
「ごめん、先生……。来るつもりはなかったんだけど。他にどこにも行くとこなくて……」
寒さで口がうまく回らないらしい。
いつもよりたどたどしい口調が痛々しい。
「そこに座ってたらドアが開けられないよ。ほら、立って」
手を伸ばすと、昴はおずおずと握ってきた。
その、あまりの冷たさに驚いた。
とにかく、早く暖めてやらなきゃ。
部屋に入るとすぐ、貴臣はバスタオルを出し、昴に手渡した。
「ひとまず、これで拭いて。今、風呂沸かすから」
玄関先でぬれた髪や服を拭きながら、昴は首をふった。
「いいよ、風呂なんて。拭けば大丈夫だし、すぐ帰るから」
「いや、そのままじゃ風邪ひくから。そんな状態で遠慮するなって」
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