第四章 ターニング・アラウンド

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 急いで階段を駆け上り、部屋に飛び込むとポケットから缶を出し、昴に手渡した。 「少しはあったまるだろうから」 「ありがと……」  アチっと言いながら、昴はプルトップを開けようとするが、なかなかうまくいかない。 「ほら、貸して」と貴臣はすかさず開けて、渡してやる。  そんなふうに、かいがいしく世話を焼く貴臣がよほど意外だったらしく、昴はくすっと笑って言った。 「先生、母さんみたいだね」  昴の表情が少し和らぎ、貴臣はほっと息をついた。    大事そうに両手でスープの缶を抱えている昴は、まるで子供で、これまで気持ちを抑えつけていた分、よけいに愛おしさが募る。  もう降参だ。  これ以上、彼を突っぱねるなんて不可能だ。 「先生……」 「ん?」 「なんで帰れって言わないの? 前はもう来るなって言ったのに」  昴はまっすぐ、貴臣をみつめる。 「ほっとける訳ないだろう」  貴臣は、昴の、まだ濡れている髪に触れ、頭を撫でた。 「それに……もう、自分の気持ちに正直になることにしたんだ」 「えっ、それって、どういう意味?」
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