第一章 出会い

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 他のみんなは、その美しさに圧倒されている。  だが、貴臣は違った。  以前、渋谷で見かけた高校生が目の前に現れた偶然に、ただ驚いていた。  今年25歳になる小川貴臣(たかおみ)は、美大の院生で油絵を専攻している。  院に入った2年前から、指導教官の紹介で、ここの講師のアルバイトをしていた。  あそこへは、よく足を運ぶ。  制作に行き詰まったり、意味もなく落ち込んだりしたとき、喝を入れてもらう。  あの、エネルギーの坩堝(るつぼ)のような壁画に。  とはいえ、貴臣自身は、まるで正反対の静謐な世界を好んで描いているのだけれど。  あの日も友人と待ち合わせしていたので、約束より1時間早く行き、壁画に足を運んだ。 すると、めずらしく先客がいた。    いつもの自分と同じように通路の反対側に立ち、じっと壁画を見つめている。  学校帰りの高校生らしい。  白いシャツに黒いスラックス。  スニーカーに大きなリュック。  ごく平凡な制服姿だ。  だが、ちらっと見えた容姿は非凡で、とても美しい横顔をしていた。
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