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どう答えようかと思ったとき、風呂のタイマーが鳴った。
「まず、とにかく風呂。話はその後にしよう」
貴臣は、奥の部屋に行き、トレーナーの上下と下着を持ってきた。
それから、昴を風呂場に連れてゆき、使い方を説明した。
「じゃあ、ゆっくりつかれよ」
「うん」
昴は湯気が充満した狭い風呂場に入っていった。
***
30分ほどして、昴は濡れた髪をタオルで拭きながら、部屋に入ってきた。
その様子が妙に色っぽくて、胸がざわつく。
おい、こんな時に何を考えているんだ。
貴臣は自分を強く戒めた。
昴はタオルを被ったまま、定位置だったベッドの前に腰を下ろした。
「まず、何があったか教えてくれるか」
優しく問う貴臣に、昴は今日、家であったことを話しはじめた。
「成績がガタ落ちしちゃって」
膝を抱え、自分のつま先を見つめながら、昴は呟くように言った。
「昨日、期末の試験返却日だったんだ。今日は父親が休みで、昼飯食べ終わったとき、成績表を見せろって言われて『なんだ、この成績は』ってさんざん叱られて」
昴は淡々と話を続けた。
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