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「ごめん、迷惑かけて」
「迷惑だなんて、少しも思ってないよ」
「臣先生……」
「とにかく、もう遅いから今日は泊まっていけばいいよ。でも、家に連絡してからな。心配されているだろうから」
「……心配すればいいんだ、あんな親」
そう言って、昴は横を向く。
「昴。連絡しないなら、今からタクシーで家まで送る」
決然とした表情で言う貴臣に気圧され、昴は頷いた。
「……わかったよ」
昴のスマホはとっくに電源が切れていたので、貴臣は自分のスマホを貸した。
どれほど待ちわびていたのだろう。
ワンコールも待たず、昴の母親は電話に出た。
『こんな時間まで連絡しないで、いったい、今どこにいるの?』
スピーカーを通して、母親の心配そうな声が貴臣の耳にも飛び込んできた。
電話を代わって、貴臣も事情を説明した。
「ごめん。……うん。今日は先生のところに泊めてもらう。……うん、明日、帰るから。ん、じゃあ」
電話を切り、昴はふーっと息をついた。
「明日、お父さんは家にいる?」
「うん、日曜だからいるはず」
「じゃあ、俺も一緒に行くよ。お父さんとしっかり話しあわないと」
「えっ、先生が来てくれれば、めっちゃ心強いけど……でも、話しても無理だと思う」
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