95人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
そこには、昴が描き尽くれていた。
笑顔、泣き顔、ふくれっつら。
アップ、横顔、全身。
そして、次のページをめくると、肩甲骨あたりから生え出た大きな翼のある後ろ姿が描かれていた。
「大事な俺の天使だから。昴は」
貴臣は微笑んで、言った。
「距離を置くなんて無理だって、このひと月で思い知らされたよ。昴は、俺が一緒にいてほしい唯一の人だ」
「臣先生……」
昴は潤んだ瞳を向けてきた。
キスを誘うように、彼の唇はほんの少し開いている。
理性はブレーキを引けと命じる。
でも、貴臣はそれを振り切り、昴の頬に手を伸ばした。
昴の瞳がかすかに揺らめき、伏せられる。
貴臣はなめらかな頬に触れたまま、片手で眼鏡を外し、テーブルに置いた。
コトッという音がやけに響く。
そして、顔を寄せて、顎を指ですくい、そのふっくらとした唇に口づけた。
好きだよ、と囁きながら。
軽く触れるだけのキス。
それでも、唇を離し見つめると昴の顔は真っ赤になっていた。
切ないほど愛おしさが込み上げてきて、貴臣はもう一度、昴を優しく抱きよせた。
最初のコメントを投稿しよう!