第四章 ターニング・アラウンド

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「臣先生……」 「なんだ?」 「今日、来てよかった」 「俺も嬉しかったよ。頼ってくれて。さ、もう寝るよ」 「うん、おやすみなさい」  疲れが出たのだろう。  昴はあっという間に眠りについた。  規則正しい寝息を聞きながら、貴臣の頭は逆に冴えていく。    目をつぶってしばらくじっとしていたが、どうにも寝付かれず、起き上がる。  熟睡しているらしく、昴が目を覚ます気配はない。  貴臣はそれでも音を立てないように気をつけて台所に行き、ウイスキーをグラスに注いだ。  部屋に戻り、琥珀色のアルコールを傾けながら、貴臣は常夜灯に照らされた昴の寝顔を見つめる。 「うん……」  昴が寝返りを打って布団をはいだ。  貴臣はグラスをテーブルに置き、昴の枕元に立ち、布団をかけなおしてやる。  そして、柔らかな髪に包まれている彼の頭にそっと触れた。  
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