第四章 ターニング・アラウンド

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*** 「もう嬉しくて、思いっきり走り回りたいよ」  駅まで送るから、と昴も貴臣と一緒に外に出た。  川沿いの道を歩いていくと、まるでライトを仕込んだみたいに水面(みなも)がきらきら光っている。 「臣先生、本当にありがとう」 「いや、俺よりお母さんの言葉が一番効いたんじゃないか」 「でも、きっかけを作ってくれたのは先生だから」    貴臣は立ち止まった。  昴も一緒に立ち止まり、不思議そうな顔で彼を見上げた。  貴臣は昴の頭に手をのせ、髪をくしゃっと撫でた。 「俺の可愛い昴のためだ。当然だろう」 「えっ?」  貴臣は微笑みを返しただけで、また歩き出した。 「もう先生、突然そういうこと言うの、反則だから」  昴は頬を赤くしてふくれている。 「そんなことより、コンクール受賞はけっこうハードルが高いし、その先の芸大受験も難関だぞ。浮かれてはいられないよ」 「わかってる。ねえ、コンクールって課題は自由なのかな」  「昨日調べてみたけど、まだ次回の要項は出ていなかった。ただ例年どおりなら主題は自由なはずだよ」 「じゃあ、何描くか、もう決まってる」 「何?」 「まだ内緒」  昴は悪戯っぽく、目をきらめかせた。
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