第四章 ターニング・アラウンド

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 貴臣自身は出品したことがなかったが、昨年も今年も、塾の生徒のなかにそのコンクールに出品したいという子がいて、いろいろと相談を受けていた。  昨晩、昴の寝顔を見ながらそのことを思い出し、説得材料に使えると思いつき、ようやく浅い眠りについたのだった。 「先生がいてくれたら、どっちも行ける気がする」 「そんな甘いもんじゃない」 「わかってるって、ちゃんと頑張るから」 「よし、じゃあ、明日から特訓開始だ」 「よろしくお願いします」  昴が立ち止まって、深々と頭を下げる。  顔を上げて、また笑いあって。  貴臣は、こんな解放感を味わうのは、もしかしたら生まれてはじめてかもしれないと思っていた。    そうして、昴に出会えたことがどれほど自分にとって大きなことであるか、改めてかみしめていた。  
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