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そういうのは、ある日突然やってくるものだ。
「はあ〜いっ! おやおや昼間っから制服で。元気に不登校やってるぅー?」
「……どちら様ですか」
スーツにはどうしたって合わない大きな帽子から、その女性は視線を覗かせた。
「君に、いいアルバイトがあるんだ。柏樹 脩くん──」
昔から、誰かの忘れ物を見つけるのが上手かった。誰かの筆箱。誰かの体操着。誰かの給食袋──。僕があまりに早く見つけるものだから、僕が隠したんじゃないかと疑われた。
けど、それも一時だった。
道端のハンカチ。川瀬のキーホルダー。公園に忘れ去られたサッカーボール。相変わらず僕は忘れ物を見つけてしまう。
──夕暮れを知らせるカラスの声に混じって、それは聞こえてきた。
『あの子には幽霊が見えてるんじゃないか』
なぜ、そんなことを言われるのかわからなかった。わからないまま、次第に僕の周りから人は消えていった。
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