ワスレモノ

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「まあ、テキトーに掛けておくれよ」  と、促されて、脩は目の前のソファーに腰を下ろし、女性はデスクによりかかって長い足を組んだ。 「君にアルバイトを頼みたくてね」 「それはもう聞きました」  恐る恐る啜った珈琲は薄かった。 「ははっ! 手厳しいね。わかった。アルバイトの内容を話そう」  女性の口角が上がった。 「君にを探してほしい」  脩は間髪入れず答えた。 「僕に霊感なんてありませんよ」  女性は一瞬ぽかんと口を開けていたが、すぐに声を上げて笑った。その様子に脩は困惑して固まった。そしてすぐに向かっ腹がたった。 「あなた、どっからか僕の噂を聞いてきたんじゃないんですか? 名前も知ってたし」 「まあ、それは間違っていないけどね」 「だったら──」  お断りだ、と言いかけた脩の口に女性の人差し指が触れる。虚をつかれ、脩はビクッと肩を震わせた。  女性の口角が柔らかく上がる。帽子で見えないが、微笑んだようだった。 「君は思い違いをしている」
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