1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「まあ、テキトーに掛けておくれよ」
と、促されて、脩は目の前のソファーに腰を下ろし、女性はデスクによりかかって長い足を組んだ。
「君にアルバイトを頼みたくてね」
「それはもう聞きました」
恐る恐る啜った珈琲は薄かった。
「ははっ! 手厳しいね。わかった。アルバイトの内容を話そう」
女性の口角が上がった。
「君に忘れ物を探してほしい」
脩は間髪入れず答えた。
「僕に霊感なんてありませんよ」
女性は一瞬ぽかんと口を開けていたが、すぐに声を上げて笑った。その様子に脩は困惑して固まった。そしてすぐに向かっ腹がたった。
「あなた、どっからか僕の噂を聞いてきたんじゃないんですか? 名前も知ってたし」
「まあ、それは間違っていないけどね」
「だったら──」
お断りだ、と言いかけた脩の口に女性の人差し指が触れる。虚をつかれ、脩はビクッと肩を震わせた。
女性の口角が柔らかく上がる。帽子で見えないが、微笑んだようだった。
「君は思い違いをしている」
最初のコメントを投稿しよう!