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「くそ、なぜ俺があんなブスと結婚せにゃならんのだ!俺はイケメンプリンス、フランク様だぞ!俺は美人と結婚したいんだーーー!」
そんなことを叫んでると後ろから執事が追いかけてきた。
「王子!お待ちください」
「なんだ!止めるな!俺は家出するからなっ!!」
「実は耳寄りな情報を入手しまして…」
「ん?なんだ?言ってみろ」
「城の西…森の奥になんでも顔を変えることができる魔法の仮面を作っている魔女がいるそうな…」
「なにっ!?それならナタリーの顔にその仮面を使えばいいんじゃないか!?」
「おっしゃる通りです」
「よし、おまえ俺の代わりにその魔法の仮面とやらを取ってこい」
「かしこまりました。そうしましたら絶世の美女の仮面を…」
俺は執事の顔を見てふと懸念点が生まれた。
「…いや、待て。俺が自ら行ってこよう。おまえの好みが俺にとってのブスだったら意味がないからなっ」
「は、はあ…」
俺は西の森にある魔女の家へ向かった。
「ここか。思ったより近かったな。余裕じゃないか」
小屋のような家のドアを思いっきり叩く。
「たのもーっ!仮面をくれー!」
しばらくすると中から紫の布を身にまとった老婆が出てきた。
「何か用かね」
「ここに顔を変えることができる魔法の仮面があると聞いた」
「ああ…あるよ。おはいり」
家の中に入ると壁には二十ほどの仮面が掛けられていた。
「おお!種類豊富だな。…ふむ、これがいいな、これにしよう」
俺は仮面の中で一番美しい顔面を手に取った。
「女性用の仮面?あんた女顔になりたいのかい?」
「俺が?はは、何を冗談を。俺のこの容姿なら仮面なんていらないだろう」
「じゃあ何故また」
俺はことの成り行きを手短に説明した。
「なるほどねえ…婚約者が醜いから美人の仮面が欲しいと」
「そうさ!俺にふさわしいのは美人なんだ。ではこれは貰っていくぞ。金はこれを。釣りはいらん」
金を置き出ていこうとした瞬間、老婆に肩を掴まれた。
「ちょいとお待ち」
「ん?なんだ?」
「あんたに似合う仮面があるよ」
老婆はそう言うと振り向いた俺の顔面に突然仮面を押し付けた。
「うわあっ!!?!」
「ヒヒヒヒヒ」
俺は押し付けられた仮面が自分の顔に吸収されたような感覚があった。
「な、なにをするんだ!!??!」
「あんたみたいな心が醜い者にはその仮面がお似合いさ!」
老婆はそう吐き捨てると俺を外へ放り出して戸を完全に閉めた。
「おいふざけるな!!早くこれを外せ!!」
何度戸を叩いても老婆は出てこない。
「くそっ、いったいどんな仮面を貼り付けたんだ…?」
俺は近くにあった水たまりの水面で自分の姿を確認した。
誰だこれは?とんでもないブスが映っているじゃないか。さっきまでイケメンであった俺の顔は見るに堪えない顔面へと変わっていた。
俺はあまりのショックと絶望で後ろに倒れ込んだ。
「………な、なななな、なんてことだ……このイケメン王子フランク様が…ブスになるだと…?こんなことは許されない……兵を率いて八つ裂きにしてやる!!待ってろ!!」
憎しみに満ちてますますブスになった俺の顔面は、魔女の家を睨みつけたあと城の方向へと向き直した。
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