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【ノスタルジック】
もう何十年ぶりだろうか?
私が17歳の時に家を追い出されてからだから……
約30年ぶりくらいになるのかな?
今、私が生まれ育った故郷である街はどうなっているのだろうか?……と突然、気になりだした私は、一度も足を踏み入れていない故郷に帰ってみる事にした。
電車で一時程、揺られると、車窓からは薄ぼんやりと見覚えのある街並みが見えてきだした。
実家へ行く前に散歩がてら、故郷の街を闊歩してみた。
私が通園していた幼稚園は無くなり、知らない豪邸がそびえ立っていた。
通学していた小学校も中学校も立派な建物へと変貌しており、正直、ガッカリした。
中退した高校は、相変わらずヤンキーもどきな連中が賑わいをみせていた。
少し、クスリと私は笑った。
商店街は、もう、あの頃のような賑わいがなく軒並み、シャッターがしまっていた。
私がバイトをしていたファミリーレストランは残っており、私は久しぶりに、その店に入り昼食を済ませた。
私がバイトをしていた頃には無かった『ドリンクバー』があった。
そこでホットコーヒーを自分で注ぎに行き、席に戻ると一口、口に含んでみた。
「不味い」
思わず私は、そう呟いてしまった。
このファミリーレストランはコーヒーが、他のファミリーレストランよりも美味しかったのに残念だ。
そしてラスト。
実家へと向かった。
実家の周りの家は豪邸だらけ。
あれ?
此処は何処なんだ?
私は目眩に襲われ少し、しゃがみ込んで呼吸を整えた。
それから立ち上がり、更に歩くと……。
かなり老朽化した実家が見えてきた。
嗚呼……。
母はもう亡くなっているから、きっと、あの古ぼけた家で……年老いた父が住んでいるのだろうな……。
そう思いながら私は、実家の玄関まで行った。
だが……。
チャイムを押す事無く、私は帰宅してしまった。
今更……。
私は何を期待していたのであろう?
あの頃の父には……もう、会えないというのに。
私は、ヨボヨボになった父の姿を見てはいけないんだ。
そして私は、また、電車に揺られ……故郷をあとにした。
家族が待つ街に到着すると、私は、一筋の涙を流した。
私はにはもう……。
この街しかないと悟ったからだ。
さよなら、我が故郷。
ありがとう、我が故郷……。
(2022年11月28日)
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