【言の葉の欠片《2》】

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【愛すべき𝐦𝐲布団の末路】 今日は昨日の豪雨とはうって変わっての晴天だった。 そうだ!!!! 久しぶりに自分の布団を干そう!!! そう思いたったんだ。 鬱で寝込んでいるばかりであった自分の布団は、実に10年もの間、自分が苦しくて寝込んでいた時に優しく包んでくれていた。 だから既にペラペラになっていた𝐦𝐲布団。 それでも太陽の光に当てれば少しは𝐦𝐲布団も喜ぶと思って干したんだ。 そしたら……。 いきなり突風が𝐦𝐲布団をカッサライ、自分が住んでいるマンションの四階から一階の部屋の庭に落ちてしまった。 自分は慌てて、その一階の主のインターフォンを推しに行った。 ピンポンピンポン!!!! いくら鳴らしても、その一階の主からの応答が無い。 どうしよう……。 自分は狼狽えてしまった。 すると同じ一階のお隣さんが顔を出し、 「ああ、そこの人ね。殆ど帰って来ないよ?どうかしたの?」 と自分に訊ねてきた。 「布団を落としてしまったのですが……」 と自分が応えると、お隣さんは、 「……諦めて新しい布団を買った方がいいよ?」 と言ってドアを閉めて姿を消した。 自分は泣きそうになりながら再び自室のベランダから下を覗くと𝐦𝐲布団は捩れて、悲惨な姿……人間の死体の様に見えた。 ……あれが自分だったら良かったのに。ごめんよ?𝐦𝐲布団。 物言わぬ𝐦𝐲布団の亡骸に手を合わせると自分は渋々、新しい布団を買いに行った。 (2022年11月24日)
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