【言の葉の欠片《2》】

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【息子のサイン】 私の息子は先に述べた様に知的障ガイを伴う自閉症だ。 療育手帳持ちでB判定。 所謂、中度の障ガイ者である。 息子は今でこそ障ガイ者枠で働いているが、小さい頃は大変だった。 『何故、この世界は僕の邪魔をするのだ?!!!』 と言わんばかりに……。 日本の社会のルールを押し付けられる度に……。 小さかった息子は雄叫びを上げ暴れ回っていた。 その押し付けは当時の私もしていた。 幼い息子の気持ちも考えずに。 今の息子は大人しくなって『普通』に近い人間になっている。 周囲の健常者は、その息子の姿を目にして『良い子』だね……と褒める。 今の息子は、こじんまりとした日本の社会のルールに従っている。 日本国憲法を作った政治家が、そんな息子の様子を知り自分達の考えは間違えではなかった……と主張する。 一方、私はこの歳になり日本の社会のルールに反発して……自由になりたいとほざいている。 ああ、そうか。 あの頃の息子も、きっと自由になりたかったのだな? ところで。 息子は昔、玩具の刀を集めるのが趣味だった。 あまりにも膨大な量だったから当時の私は、その刀の玩具を殆ど捨ててしまったけれど、不思議な事に息子のお手製の刀は捨てられずにいた。 今の息子は。 その残った……お手製の刀を出勤前に振り回してから出勤するのが、毎日のルーティン。 きっと……。 刀を振り回している一時が、本来の息子の在るべき姿だったのだと……今の私なら判る。 それは……。 私の……僕の……。 『自由にさせてくれ!!』というサインであるという事を……。 (2022年11月25日)
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