零匹 ダルバラ

2/3
前へ
/5ページ
次へ
 ゴトゴトと揺られていた。  皆が揺られ、狭い空間にひしめいていた。  荷馬車。  街から街へと移動する移動馬車だ。  人間を移動させる馬車が一台。積み荷を移動させる馬車が二台。計三台からなる商隊が森の中を移動していた。  外は夕暮れにさしかかろうとしていた。  次の街は明日着くと聞く。  男は隣り合う人に迷惑が掛からない程度に身じろぎをして肩を揺すった。  狭い。  路銀の問題でケチをしたせいだった。  世知辛い世の中だ。聖教会を出てしまった身である以上、無職といえば無職の身だ。その日暮らしの仕事を受けることもあるが、どうしても手荒い仕事しか紹介されない。仕方ないと言えば仕方のない話かもしれないが、寂しいと思う気持ちもでてくるものだ。  馬車の中は様々な人達が乗り合わせていた。  そんな中、旅には似つかわしくない姿もある。  小さな男の子とその母親だろうか、二人の親子が身を寄せ合って寝ていた。仲睦まじいといえるが、その表情は苦痛にまみれている。一体なにがあったというのだろうか。全くもって世知辛い世の中だ。  どの国も領土拡大拡大と戦争に明け暮れ、世は乱れに乱れている。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加