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壱匹 邂逅と激突
夕暮れ近くになってきた。
やはりケチってまだそんなに遠くないからと歩くからいけないのだ。
「どの辺りまで来たんだ!」
いらだちを隠そうとせずに相棒へ怒鳴る。
「まだ、半分程度って感じかな」
返ってくる言葉はまるでそよ風でも当てられたかのような涼しげなものだ。
それが余計にいらだちを募らせる。
「なにぃ、まだそんなものか! 朝一から歩いているんだぞ!」
「だから、近いといってもそこそこ遠いっていったじゃないか」
「ふん!」
不機嫌となっているが、この原因を作ったのはこのいらだっている男だ。
自業自得とはこういうことを言うのだろうか。
相棒の青年はやれやれと肩をすくめていた。付き合いは長いのだろう、男の恐ろしいまでの形相を見ても怯むことなく返していた。
恐ろしい形相……まさしく、一般人には見えない風貌の男だった。黒目が小さく、見事なまでの三白眼は蛇のように鋭い。その頬には古傷が刻まれていた。そり込みの入ったオールバックの茶色い髪は風を受けて少しだけたてがみのようになびいている。一目で悪人と言えるような凶悪な顔つきをしていた。
対して青年は鼻立ち、目尻などがくっきりし、場所によっては美男子としてもてはやされることだろう。さらに頭に巻いたターバンの隙間から美しい銀髪が垣間見えた。相棒の男とは正反対の容姿だった。
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