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凸凹コンビといえばいいのだろうか。あまり、この二人が仲良さそうにしている理由がぱっと見では理解しかねる感じではある。
悪人面の男はバルザスと言った。
顔に似合った使い込まれた古い革鎧を身に着けている。その腰には長剣が下げられおり、見た目通り荒事専門の職についているのだと理解できた。対して相棒はというと、武器らしい武器は見当たらず、体格もバルザスよりもだいぶほっそりとしている。
美男子の名はランスと言った。
夕暮れは進み、みるみるうちに周辺は闇に飲まれるように薄暗くなっていた。
「さて、何処かで野営しないといけないですね」
「ぬぅ」
ずいぶん前に持っていた酒を飲みきってしまった。
酒がなく、バルザスは少し不機嫌気味にあたりを見回していた。
そんなときだった。
そよ風が彼らの鼻腔をくすぐった。
「ぬ?」
「これは……」
二人は同時に顔をしかめる。
嗅ぎ慣れた香り、慣れ親しんでしまった空気がする。
ランスは耳をそば立てる。
「誰か、こっちに走ってくる」
「……みたいだな」
目を細め、バルザスは剣を抜く。
その視線の先、目の前の街道をよろめきながら一人の男が走ってくるのが見えた。
「やれやれだ」
凶悪な顔が喜悦へと歪むんでいた。
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