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 「どうした?」  「織田さん、捜査会議の時にモニターに映る人物を気にしていましたよね? あれは和装の人だった。もしかして、山伏……」  「ふむ。なかなか注意力もいいじゃないか。良い刑事になれるな」  「えへへ……」  得意げに胸を反らし、頭をかく雅。  「そういう単純なところはまだ未熟だけどね」  ぐっ! と詰まる。  「単純ですみませんね。で、その人は事件に関係あると?」  「わからんよ。ただ、服装も気になるとして、それよりまずあの表情が他の野次馬達と違っていた。どこか思い詰めたようなところが感じられたんだ。だから気になった」  イヤなおっさんだが、洞察力はすごいんだなぁ、と感心した。  「でも、修験道は仏教に属するきちんとしたもので、特に怪しい宗教ではないはずですよね?」  「元々は山岳信仰で、それに密教等の要素も加味されて確立した。平安時代に盛んになり仏教の一派として統制され、その後時代の流れによって禁止令が出されるようなこともあったが、連綿と続いている立派な信仰だ」  「なら、その村の宗教とは……」  「もちろん違う。しかし、ルーツをたどれば同じなのかもしれない。山岳信仰から続く宗派の中には、独特の教義や祈りの形態、呪法や邪術を先鋭化し、それがために他から異端として疎まれているものもあった。古来あの地域に村を造り隠れるようにして住み着いたのは、そういう宗派に属する者達だったと……。これは、私がその村の生き残りの方々から何とか聞き出した話からも推測されることなんだけどね」
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