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さて、と雅は歩き始めた。自宅マンションまで10分程。クールダウンもかねてしばらくウオーキングだ。
大通りにはトラックも行き交っていた。朝の時間帯は特に多い。平日なので通勤の人達もちらほらいる。朝早いのにご苦労様、と心の中で思った。
ふと、狭い路地の奥に目をやると、ガラの悪そうな男達が何かやっているのが見えた。夜通し遊んでいたのだろう。こっちは困ったものだ。
別に放っておいてもよかったのだが、どこか気になった。
少しだけ路地を進んで、様子を見てみる。
「だから、介抱してあげるから、一緒に来な、って言ってんじゃん」
「疲れちゃったんでしょ? 休ませてあげるから、おいで」
男が3人、路上にしゃがみ込んでしまっている女性を取り囲んでいた。
「ほら、とりあえず立って……」
1人が女性の手を取って立たせようとしたが、彼女は無表情で何も反応しない。目が虚ろだ。このあたりはそんなに風紀が悪いわけではないが、バーや居酒屋は多い。飲み過ぎたのだろうか? それともまさか、何かドラッグでも……?
気になり近くまで進む。
「何だよ。しょうがない、抱えていくか」
男達が女性の肩や腰のあたりに手をやり、無理矢理引き上げようとする。
女性が少しだけイヤそうな、あるいは脅えたような表情をした。
「どうしたんですか?」
まずいと思った雅は声をかけた。
え? と驚いて振り返る男達。
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