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 へえ……と、雅は溜息をついた。20年前に山奥で起きた未解決の惨殺事件。それをこの織田は、地道に調べ続けていたということだろう。元村民から昔話まで含めていろんな話を聞いて……。  その重みは充分感じた。しかし、考えが超常的な方向にいってしまうのは今ひとつ納得できない。  「そんな異端の宗派で、いわゆる呪いやなんかにも通じているかもしれないからって、人ならざるものが事件を起こしていると考えるのは、やっぱり飛躍しすぎでは?」  気を遣いながら言ったつもりだった。織田にもそれは伝わったようだ。だからか、少し深刻そうな表情で雅を見る。  「厭魅……」  ぽつり、と織田が言う。  「え? えんみ……? そういえば、最初の現場でそんなことを呟いていましたよね。それはいったい何なんですか?」  「厭魅とは、まじないで人を呪い、殺すことだ。あるいは、呪法により死者の体を起こし人を殺させること……」  ゾッとして息を呑む雅。何で突然そんなことを?  「20年前の事件の生き残りの元村人達の何人かが、その言葉を口にした。しかし、なぜそんなことを言うのかは誰も説明してくれなかった。まるで何かを怖れているようにね」  「突然口にしたんですか、今の織田警部みたいに」  「そう。全く手がかりが掴めない事件だったんで、もう単刀直入に『いったい何が起こったんですか?』と訊いてみたことがあるんだ。そうしたら、ある人はポツリと、ある人はしばらく考えた末に、その言葉を口にした。そして、それ以降は口を閉ざした。どういう意味なのか質問を重ねても、黙り込んでいてね。一人だけが、続けてこうも言った『厭魅絡繰』と……」
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