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再びの2013年1月2日
そんなこんなで、迎えたのが2013年1月2日。
通っていた語学学校の新年最初の授業日。
この語学学校は、休み明けだろうと体調不良明けだろうと関係ない。
毎日たくさんの試験が課せられるため、一気に語学力を伸ばせると評判でもあった。
2月に帰国が迫っていた私も、最後の追い込み中だったのだ。
何故なら、帰ってすぐ就職活動が待っている。
このトロント生活について聞かれた時、まさか
「彼氏探しに来たのに、特に何も成果がありませんでした」
なんて言えるはずもない。
いや、世の中には言える人もいるかもしれないが、私には残念ながらそんな度胸はなかった。
そういう訳で、トイレの個室は詰め詰めの授業が続く中で、ほっと一息つける時間だったのだ。
これを言い訳にできるかはわからないが、確かにこの時の私の脳は、半分以上は次の授業のことばかり考えており、受け取ったメッセージの裏に隠された、送り主の意図に気づくゆとりは存在しなかった。
ただ、文字通り受け取ってしまったのだ。
愛子さんの婚約者は、アメリカで愛子さんからトムとのことを聞いたのだと。
それについて、私は何か知っているか?
端的にいえば、それだけの内容だ。
この時、私は普通に
「知らない」
と言うのが正解だったのだろう。
愛子さんもトムも、私に最後の最後まで真実を隠そうとした。
つまり、今でも愛子さんの中にいる私は、愛子さんが婚約者と仲良くしていると考えている存在なのだから。
そのまま貫いてしまえば良かったのに。
母国語が通じないコミュニティに属してしまい
「日本人だから助けたい」
という、同族意識が私の中に醸成され、困っている現地の日本人を自分にできることであれば助けたいと動き回っていた、私のお節介モードがこの瞬間発動してしまったのだ。
そのメッセージに対して、私はこう返した。
そうなんですね。知りませんでした。
でも、母国語が通じないところにいると、頼れる人が欲しいという気持ちになることは私にもありました。
私の周囲には、英語を学びたいという理由や、寂しさを紛らわせたいと言う理由で、現地でお付き合いする人を作っている人もいました。
そういうことは、この場所では起きています。
この時は、現地の状況と、そうなっても仕方がないと思ってもらう理由を説明する方が為になると思っていたのだ。
愛子さんにとっても、愛子さんの婚約者さんにとっても。
ここで、休憩時間が終わり私は授業に戻った訳だが、この後どうなったか。
愛子さんのfacebookから私は友だち登録が削除されていたのだ。
あ、やらかしたんだ私。
その日の帰り道は、吐きそうな胃痛を堪えながら家に戻ったことだけは、よく覚えている。
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