それを可愛いと思う人、ずるいと思う私

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それを可愛いと思う人、ずるいと思う私

 私は、メールでのコミュニケーションの中から、愛子さんがどれだけ我慢をしていたかは聞いていた。  でもトムに嫌われたくないから、物分かりがいい風に見せてきたのだと。  そんな手間すら惜しまないくらい、愛子さんはトムのことが好きなのだと教えてくれていた。 (ていうか、そんな話を、英語とはいえこの子の前でするなよ……)  すでに二人の間では共通認識の内容だったとしても、私から見ればトムはやはり自分勝手だと思った。  1度目なのか、何度か聞かされていたのかは知らない。  だが、まだお嬢様がこのシェアハウスに来て、トムが自分とセックスできなくなったと知ってから1ヶ月も経ってないのだ。  癒えているはずのない傷に、トムは無神経にガシガシと塩を塗りつけていく。無自覚に。  でも、その話をしている時は、無防備で飼い慣らされた犬のような表情をしていた。  愛子さんは、それを可愛いと思ったと言った。  お嬢様はどうかは知らん。  私は、ただずるい人だな、と思った。  そんなことを思いながらも、涙をハラハラと流し続けるお嬢様に幸せになって欲しいと心から思ったので、頑張って自分なりにお嬢様を慰めるためだけに、必死で知っている単語だけを組み立てて話をした。  話のテーマは「縁」。
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