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2013年1月2日の幕開け
その知らせを受け取ったのは、私は当時通っていた語学学校の個室トイレの中で、何気なくFacebookをスマホで眺めていた時だった。
「杏咲ちゃんだよね?」
このような始まりで受け取ったメッセージは、私が聞いたこともない男性の名前が差出人。
もし、この時私が日本にいたとすれば、そんなメッセージは完全無視のブロック案件だったろう。
だが、このメッセージの中には見過ごせない文字列が含まれていた。
愛子
それは、数日前から連絡が取れなくなっていた、年上のシェアハウスメイトの名前。
その瞬間、私は嫌な予感に身体中が支配され、便器の中に出すべきものが引っ込んでしまった。
(まさか……)
私は、急いでメッセージをスクロールし、差出人が話だけは聞いていた愛子さんの婚約者であることを確認した。
「うわあ……関わりたくねえ……」
つい漏れてしまった本音。
その本音を抱えたまま、そのメッセージをスルーすれば、その後地獄の1ヶ月を過ごすこともなかったというのに、私はお節介を焼いたあげく、見事にそれを炎上させてしまったのだ。
だがあえて言いたい。
私、悪くない。
だって私は、その時まで知らないことになっていたのだから。
愛子さんが、日本に婚約者を残したままカナダに来て、シェアハウスメイトであるトムと深い仲になっていた事実は。
ついでに言えば、そのトムが韓国人のお嬢様と婚約をしていた事実は、残念ながらよーく知っていた。
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