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運命のシェアハウス
運命のシェアハウスが、e-Mapleというサイトの掲示板で募集がかかっていたのを見つけたのは、2011年10月下旬だった。
e-Mapleというのは、カナダに住む日本人が、現地の情報を手に入れるために使っているもので、私は現地に行って存在を知ったのだが、仕事探しから物の売買など、あらゆる情報交換がされる現地の日本人全ての命綱の機能を果たしていた。(と、少なくとも私は思っていた)
私自身は、10月中旬頃に日本から来たばかりだったのだが、当時留学エージェント経由で住んでいたホームステイ先との折り合いが悪く、出られるなら早めに出てしまいたいと思っていた。
この理由は「当時の私の語学力の低さから来るコミュニケーションエラーが多発した結果、私が勝手にホームステイ先の家族のことを怖がるようになった」が正しいのだと後に気づくのだが、家庭のルールの違いや、お風呂1つの使い方の違いなど、日本語だったらすぐ理解できるような内容を一つひとつミステリーの謎を紐解くように考えなくてはいけなかったことが、精神時にしんどくなっていた。
そのため、日本語で書かれていたそのシェアハウスのお知らせには真っ先に食いついた。
場所は、トロントのダウンタウンからは遠い場所で、普通の留学生であればそこを借りることは滅多にないらしい。
けれど、私はGoogleの地図と睨めっこした結果、トロントの交通機関、TTCの地下鉄のターミナル駅というメリットに気づいた。つまり、朝は確実座れるということ。都会の満員電車で長時間通学の経験がある私にとっては、天国のような条件だと思った。
そして何より、値段が安い。光熱費込みで当時のレートで4万以下。初めてのシェアハウス探しにしては好条件だと思った。結果この判断は正しく、金額諸々を鑑みた時の条件がこの家以上のものを見つけることができなかった私は、帰国するまでこのシェアハウスにお世話になったのだった。
そして、私が2人と最初に会ったのは、私がそのシェアハウスに見学に行った、2011年10月末日。
例の家の扉を私がノックした際現れた人間こそが、トムだった。
(おお……ないな……)
冒頭にも書いた通り、私の裏目的の1つに「彼氏を見つける」というものがあったため、即座に恋愛対象として見られるかを確認したのだが、見事に好みから外れていた。しかも当時ニートだと聞いた。余計ない。
とはいえ、家の条件はやはり良すぎた。日本の自宅の2倍以上の個室や、パーティールームとしても使えるダイニングを自由に使えるという条件は、月4万円以下の家賃以上の恩恵をもたらすと瞬時に察知した私は、すぐにこの家に引っ越したい旨をオーナーに伝えた。
オーナーはトムの母親で、色気がある美魔女というのが第1印象。このオーナーは奔放な恋愛を、1年以上私に推奨してくる人物になるのだが、残念ながら私はその話を聞いたところで1度たりとも奔放になることはできなかったというのは、また別のお話。
そんなこんなで「ないな」と第1印象で判断したトムも含めた、合計4人と暮らすシェアハウス生活が11月上旬からスタートすることになるのだが、その初日で知ることになる。
トムと同じ部屋で寝起きする韓国人の彼女がおり、その2人の部屋が私の部屋の真上にあることを……。
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