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「私だけが知らなかった」事を聞かされた日
カナダに住む人全体の文化なのか、正式なところは定かではないのだが、私が住んでいたシェアハウスでは、何かお祝いごとがある時はパーティーと称して定期的に庭でBBQをやることが多かった。
私の友人がやってきた日の夜も、シェアハウスのオーナー主催でBBQが行われた。食費は支払う必要はないが、食品持ち寄りがルールのポットラックパーティーでもあったので、私は友人とちらし寿司ケーキというものを作った。
ちなみに日本食を作る材料は、韓国スーパーに行けば見知ったものは揃うのだが、普段の食事までそのスーパーで賄うとエンゲル係数がもんのすごく高くなるので、何かお祝い事がある時か、どうしようもなくホームシックになったとき以外は使わないようにしている。
例えば、キュー●ーマヨネーズは日本で売られている金額より2倍は高い。
今回は前者なのと、私がこのちらし寿司ケーキに費やすお金以上にBBQでたらふく肉を食えば問題はないだろうと考えたので、生活が困らなくならない範囲で必要な材料を買い込んだ。流石に生で食べられる海鮮は1パック1000円は超えるので、そこは代理のハムやきゅうり、卵焼きで誤魔化した。
そうして始まった友人の歓迎会は、特に何事もなく始まり、そして終わるかと思った。
私は必死で肉を食べつつ、人見知りだと聞いていた友人が、少しでもこのシェアハウスに馴染めるようにと、自分なりに気を配ったつもりだった。
そのためか、友人とトムが英語で笑顔で談笑する場面もあったので
「良かった。友人もこれで安心して、1ヶ月間このシェアハウスに住んでもらえるだろう」
と思っていたのに。
パーティーが終わり、私が後片付けをしている時だった。
友人が突然私にカミングアウトしてきた。
「トムと愛子さん、付き合ってるよ」
「え、そんなはずないよ。あの2人婚約者いるでしょう」
私はすぐさま反論した。
ところが、友人は重ねてこう言った。
「さっき、私とトム、話してたんだけど」
「うん」
「愛子さんとほぼ毎日セックスしてるって話してたんだ」
「……へ?」
よくよく話を聞くと。
どうも愛子さんとトムは、何故か私には隠そうと2人で決めていたらしい。
だったらいっそ、友人にこそ話すべきではなかったんじゃなかろうか、とトムを心の中で責めた。
何故なら、どちらかといえば友人の方が浮気不倫系や性的な話にアレルギーがあり、すでに1ヶ月間無事に過ごせるのだろうかと不安に感じてしまったから。
「とりあえず、私はほぼ1年住んでるけど、マジで何もないから大丈夫だよ」
と、私は友人を宥めてその場をおさめたのだが……私の中ではやはり大きな疑問が1つ残った。
何故、私にだけ隠そうとした?ということ。
念のためにお隣の日本人の奥さんにもこの件確認とってみたら、奥さんはすでに知っていて黙っていたとのこと。
奥さんの推測では
「杏咲ちゃんは、そういうこと毛嫌いしそうだから言わないようにしようって思ったんじゃないか」
ということだったのだが。
ただ、私は私でこの話を聞いて何を思ったか。
「私を巻き込まなければ、害はないしいいかな」
だったのは、自分が1番驚いた。
まさかこの時の考えが後の「巻き込まれるフラグ」になるなんて、誰が予測できようか。
やっぱり解せぬ。
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