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ノウサギが落としていった『忘れもの』を動物達に全部取られたネザーランドドワーフウサギのあかりは、野を越え山を越え必死に動物達を追いかけた。
「待てぇーーーーーーーー!!待ってよぉーーーー!!
私のドングリと木の実待ってぇーーーーーーーー!!」
ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん・・・
もうどのくらい駆けていったのだろうか?
ネザーランドドワーフウサギのなのは、奇妙な事に気付いた。
あのノウサギが落としていった『忘れもの』のドングリや木の実を拐っていった動物達は、皆同じ方向へ向かって走っていっている事だ。
・・・皆、あっちに棲みかがあるのかな・・・?
・・・まあいいわ・・・皆棲みか戻ってにたとたんを見計らって、この自慢のウサギキックをお見舞いして、全部奪い返すわ・・・!!
ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん・・・
更に奇妙な事に気付いた。
・・・待てよ・・・この方向は・・・
・・・あの『忘れもの』を落としていった、ノウサギが駆けていった方向と同じじゃね・・・?
ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん・・・
ずしん!!ずしん!!ずしん!!ずしん!!ずしん!!ずしん!!ずしん!!ずしん!!ずしん!!ずしん!!
「?!!」
突然、向こうから巨大な獸がウサギのように跳び跳ねながらこっちへ向かってやってきた。
「く・・・クマぁ?!」
ネザーランドドワーフウサギのあかりは、うさぎ跳びしながらやって来た1匹のツキノワグマに仰天して跳び跳ねた。
「くわばら!!くわばら!!くわばら!!くわばら!!」
ネザーランドドワーフウサギのなのは形相を変えて、迫ってきたツキノワグマから逃れようと方向転換して逃げようとしたとたん・・・
「『うさくま』さーーーん!!これプレゼント!!」
背後から、追いかけていた動物達がクマに群がってきて一斉に声があがった。
どさーーーっ!!どさーーーっ!!どさーーーっ!!どさーーーーーーーっ!!どさーーーっ!!どさーーーっ!!
動物達は抱えていた『忘れもの』のドングリや木の実を、クマの目の前にぶちまけて置いた。
「み、みんなぁーーー!!何するんだ!!これはクマにプレゼントするものじゃ・・・あれぇ?!」
クマの周りでワイワイと群がる『忘れもの』を拐った動物達の中に、あの『忘れもの』をおとしていったノウサギが居たのだ。
「ノウサギさん!!ノウサギさん!!こ、このドングリと木の実・・・」
ネザーランドドワーフウサギのなのは、ノウサギに向かっていった。
「あら、今さっきの小さなウサギさん。わたしの落とした木の実拾ってくれたんだって?ここに集まったみんなも!!」
「ええ・・・まあ・・・」
あかりは、照れ臭そうに軽く会釈をした。
「『うさ熊』さーーーん!!また春になったら逢おうねーーー!!」
「はぁ~~~~い!!」
山のようにどっさりと置いてある木の実やドングリをムシャムシャと頬張るクマは、周りに集まった動物達の呼び掛けに答えた。
「『うさ熊』ぁ?このクマ『うさ熊』っていうの?」
「うん。そうよ。『うさ熊』。ウサギに育てられたクマだから『うさ熊』。
そして、わたしは『うさ熊』を育てられたウサギ。『子うさ熊』。といか『熊うさ』って言ったらいいのかな?
で、今わたし達は『うさ熊』が冬籠もりするのでたーーーっぷりとご馳走して、また春に逢おうねとパーティーしてるの。
だって『うさ熊』は私の命の恩熊だもん。」
「あれぇーーーー?小さなウサギさんも一緒だねぇーーーーー!!」
『うさ熊』は、大きな図体を屈んでネザーランドドワーフウサギのなのに話しかけてきた。
ふーーーーっ!!と獣の匂いの鼻息がネザーランドドワーフウサギのなのの顔に吹きかかる。
「・・・!!」
「緊張しなくていいよーーー!!小さいウサギさーーーん!!」
「は、はぁーーーい・・・こ、今度春がき、来たら、い、一緒にあ、遊ぼう・・・」
・・・あ、緊張の余り思ってない言言っちゃった・・・!!
「いいねぇーーーーー!!春に冬籠もりから目が覚めたら、一緒にあそぼぉーーーー!!」
・・・やば・・・クマに約束しちゃった・・・!!
「みんなぁーーー!ありがとうーー!!おかげでお腹はパンパンだよーー!!これでおいらは冬籠もり出きるよーーー!!じゃあ、おーいらはー巣穴に行くよーー!!じゃあおやすみなさーーい!!」
「おやすみなさーーい!!」
『うさ熊』が巣穴の奥に入っていった時、空から白い小雪がちらついていた。
~ウサギのわすれもの~
~fin~
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