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さくらんぼ
書き出し文は「貴方の名前を、唇で転がす様に呼んだ」で、終わりの文は「それはきっと、大好きって言うのだろう」です
⚠微 百合要素あります
*
貴方の名前を、唇で転がすように呼んだ。
「咲良」
「ん?呼んだ?」
私の1つ前の席に座った彼女が、振り向いた。そしてさくらんぼのようなぷるんとした唇が彼女のチャームポイントだ。
「……別に」
「なにそれ」
可笑しそうに咲良はコロコロと笑った。
私は黙って窓の外に視線を向けた。乾いたボールの音と甲高い声。校庭ではテニス部が夏の大会に向けて勤しんでいた。
「あ、石井センパイだ。やっぱり王子、かっこいいなぁ」
咲良も外を見ていたらしい、テニス部の部長でエースの石井センパイを見て熱い息をついていた。
‘王子”と言っても男性では無い。
ここは女子校だ。女子校では大抵、ボーイッシュで運動の出来る人がモテる。言わば男子の代替。あるいは憧れ。
女子校での恋愛事情なんてそんなものだ。
本気で恋をしているわけではない。
私は咲良に視線を移した。彼女の横顔は美しい。王子様に向ける熱い視線に腹が立つ。その視線を、私に向けてくれてもいいのに。
私はとっくに咲良に熱い視線を注いでいる。さくらんぼのような唇を、美しい横顔も、熱っぽい視線も、コロコロした笑い声も私に向けて欲しい。私のモノにしたい。
それはきっと、大好きって言うのだろう。
*
リハビリです。
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