嫌なこと

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嫌なこと

お題 空音さんには「嫌なことは数えても減らない」で始まり、「どんな夜も生きていける」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば8ツイート(1120字)以内でお願いします。 #書き出しと終わり #shindanmaker *  嫌なことは数えても減らない。動悸、息切れ、検査、運動制限、食べ物制限。発作はよく出るし、残りの時間は限られている。  嫌なことをリストアップすれば冷静になれると思ったが、大間違いだ。嫌なことがくっきりと記されてしまっている。残りの時間が限られて、嫌なことは増えていくばかり。  だから僕はなにかに期待することもなくなり、生きる意味を見失った。期待したってどうせ近いうちに僕は死ぬだけなのだ。  そう廊下のベンチで悲観的に考えていると、「ねぇ」と女性の声が横からした。同い年位の細身の女性は車椅子に乗っていた。プシュープシューと酸素の音もする。そしていきなり彼女はいきなり自己紹介を求めてきた。 「矢澤律。17歳」  そう言うと彼女はにっこりと笑った。 「同い年だ」  そこから軽い世間話をした後、いきなり彼女はこう言った。 「生きる意味を探している。そして、人生でやり残したことがあるの。私はね、誰かときちんと人間関係を築いたことがない。それで、最初で最後だろうからさ、誰かと付き合って見たいんだよね。ねぇ律。私と付き合ってくれない?律となら何かを見つけられる気もする」  初対面の人に何を言っているのだ、と呆れた反面僕も目の前の相手に興味が湧いた。  ─そんな訳で彼女との付き合いは始まった。 * 「律、大丈夫? どうしたの?」  トントンと肩を叩かれる。 「ごめん、昔のことを思い出してボーッとしてた」 「昔?」 「君と出会った時のこと」  あぁ、と彼女は頬を赤らめて笑う。あれからもう2ヶ月。たった2ヶ月だが時間が限られた僕らにとってははるか昔に感じた。  彼女と付き合い始めてから一気にモノクロだった世界は色を取り戻した。嫌なことも、彼女といることで嫌なことは上書きされている。そして僕は嫌なことをリストアップするのを辞めた。  彼女の焦げ茶色の瞳には生きる気力を戻した僕が笑っている。 「ありがとう、大好き」 「私も」  顔を近づけて唇を重ねる。甘いひと時に僕は酔いしれていた。  彼女のおかげで僕は今を生きている。  彼女にそう言うとクスクス笑うのだろう。どんなに嫌なことがあっても、彼女と一緒なら、どんな夜でも生きていける。 * 時系列ぐちゃぐちゃですみません。
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